新築一戸建て(建売住宅)をご案内していたら、お客様から質問を受けることがあります。
特に、ご年配のお客様からはよく頂きます。
「昔の家には窓の上に庇(ひさし)が有ったのに、最近は庇が無い建物が多いですね」
「庇は後から付けることはできますか?」
「そもそも、庇は必要のないものですか?」
そこで今日は、「庇(ひさし)は必要ないものですか?最近の新築一戸建てに庇が無い家が多い理由」について書いてみたいと思います。
「庇(ひさし)」は、玄関ポーチやベランダ、窓の上に突き出すように設置された小屋根のことで、屋根自体の先端が外壁の外側まで張り出した「軒(のき)」とは区別されています。
庇や軒は、古来より受け継がれてきた日本家屋に欠かせない部位の一つで、窓やドアの開け閉めするときに、雨や風が吹き込むのを防いだり、窓からの直射日光を遮る効果など、いくつもの重要な役割を担っています。
また、日本古来から存在する建築技法で素材は木造のものが多いですが、最近では耐久面を考え金属性や強化ガラスの庇も増えてきていて、形にもいくつか種類があり、水平に建材を張った簡易的なものから、上に瓦を葺いて仕上げたものもあります。
最近の新築一戸建てに庇が無い建物が多い理由
なぜ、最近の新築一戸建てには庇が無い家が多いのでしょうか?
その最大の理由は「固定資産税」に大きく影響するからです。つまり、庇が付いた部分は、厳密には固定資産税の課税対象になるのです。
役所の職員が現地に赴き、屋根・外壁・各部屋の内装などに使われている資材や電気・給排水等の設備状況を調査した後に評価額が算出され固定資産税の額が決まります。
ただし、庇を取り付けたことでどのくらい税額が上昇するかは、取り付ける庇の構造、素材などによって異なりますが、「このサイズの庇を取り付けたので、〇〇円税額が上がります」というような定額制ではないのです。
固定資産税の額は、国が定めた「固定資産評価基準」で定められている単価を適用して算出するのですが、市町村によっても違いがあるようです。
もちろん、新築の建売業者はそのことを知っていますので、新築時に庇を取り付ける場合はその状態で申請しますし、もちろん固定資産税も支払わなければなりません。
また、固定資産税は、新築の場合は完成した翌年から課税されることを知っていてください。
庇の種類
庇は、普段の生活の中ではあまり注目されない存在かもしれませんが、建物を劣化から守ったり、直射日光を防いで室内の温度を適温に保つなど、様々な機能を持っています。
最近では立地やデザイン性からあえて庇を付けない家も多いですが、新築建売住宅を購入されて、今は庇が付いていないけれど後付けしたいと考えている人には、是非参考にしてみて下さい。
ここでは、庇の種類と後付けするときの注意点について書いてみたいと思います。
1.陸庇(ろくひさし)
2.腕木庇(うできひさし)
3.金属製庇
4.ガラス製庇
1.陸庇(ろくひさし)
「陸庇」は、シンプルな構造をした庇で、施工も比較的簡単に行うことが出来る日本古来から利用されている建築方法で、屋根部分の勾配が比較的少なく、下部は水平となっています。
「陸(ろく)」とは、建築用語で水平を意味しています。
傾斜のない平らな屋根のことを「陸屋根(ろくやね)」というように、「陸庇」も下部が水平で上部は水はけのための緩い勾配がついた屋根形状になっています。
柱や間柱の側面に庇の型板をしっかりと釘で打ち付けて設置するのですが、後付けの場合はサイディングなどの外壁材の上からビスで打ち込んで柱や間柱に固定します。
2.腕木庇(うできひさし)
「腕木庇」は、柱から腕木を出し、庇を支える形状になっています。
凝った作りのものもありますが、簡易的に作られることもあります。基本的には、柱に開けたほぞ穴に腕木のほぞを差し込んで固定するタイプの庇です。
腕木の上に桁を渡し、垂木を架けて野地板(屋根下地)を張り、屋根材には瓦や銅板などの金属板が使用されることが多いです。
ただし、金属板は1寸勾配でも施工が可能なのですが、瓦屋根の場合はは4寸以上の勾配が必要なるので、金属板の庇に比べて勾配が急になります。
「腕木庇」は伝統工法ですので、主に数寄屋造りなどの純和風建築で用いられています。
3.金属製庇
「金属製庇」は、耐久性や使い勝手の面から最近ではよく選ばれているようです。
素材の中ではアルミ製のものが選ばれています。軽量で施工しやすく耐久性もあり、見た目もシンプルでスマートなので、デザイン面から選ばれているようです。
表面の仕上げによって表情が変わるのもアルミ製の特徴の一つです。
和風、洋風のどちらの家にもマッチするとの理由で選ばれているのが「ガリバリウム庇」です。
ガルバリウムは、屋根材や外壁材として用いられる金属板で、錆びにくく熱にも強いなど、耐久性・耐摩耗性に優れた建材の一つです。
モダンな雰囲気とメタリックなカラーを好む人に人気があります。
4.ガラス製庇
「ガラス製庇」は、強化ガラスを利用した庇です。
視界や光を遮らないので解放感があり、家の見た目もお洒落になります。デザイン性の高さから、飲食店や美術館などにもよく取り入れられています。
最近では、建物のシンプルさを重視して庇をつけない家が多いのですが、そんなシンプルでスタイリッシュな外観を損なうことなく設置できるのが、ガラス製の庇です。
透明感があって主張しすぎないデザインから、玄関ドアの上部に設置する人が多いようです。
庇を後付けするときの注意点
既製品の庇をDIYで設置することも可能ですが、施工の仕方によっては見えない部分からの雨漏りの危険を伴うのが庇の設置です。
経年による雨漏りであればシーリング材の劣化などが考えられますが、庇を後付けた後に雨漏りが始まったのであれば、防水施工がうまくできていないか、ビス留めしたときに外壁にひび割れができてしまったなどの施工不良が考えられます。
また、庇がきちんと固定されていないことが原因で庇が落下したり、台風で飛んでしまうと人身事故につながるので大変危険です。
庇の施工経験があり設置に成功したことのある人であればいいのですが、雨漏りや人身事故のことを考えると、やはり庇の設置は専門業者に依頼することをお勧めします。
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