不動産の登記には「公信力」は無いのに「公示力」と「対抗力」がある理由

不動産の登記には「公信力」は無いのに「公示力」と「対抗力」がある理由 不動産売買の豆知識

マイホームの購入を検討しているお客様から「不動産の登記」について質問を受けました。

不動産のときには「公示力」はあるけど「公信力」はない

不動産の登記には「対抗力」はあるけど「公信力」はない

と言う少し不安になるような話を知り、いろいろ調べてみたのですが、よく分かりません。

「公信力がない」とは「不動産の登記内容は信じてはいけない」という意味なのでしょうか?
私は何を信じて不動産を購入すればいいのですか?

という内容でした。

そこで今日は「不動産のときには「公信力」は無いのに「公示力」と「対抗力」がある理由」について書いてみたいと思います。

 

 

所有権移転のような法律行為を行う場合、民法では「意思主義」が採用されています。

「意思主義」とは、ある品物を売買する場合、売る側が「売ります!」買う側が「買います!」と言う合意、つまり「意思表示」だけで決まる、と言うことです。

しかし、それだけでは第三者からは、その売買が成立したかどうかが分からないので「誰が見ても分かる方法で公に示しなさい」と決められています。

これを民法では「公示の原則(こうじのげんそく)」と言います。
「公示」とは、世間一般に公表すると言う意味で、その具体的な方法が、不動産では「登記」になり、動産では「引渡し」になるのです。

 

「公信力」とは、どのような力でしょう?

「公信」とは、世間一般の信用と言う意味です。では、「公信力」とは、どういう意味でしょう?

ある物事について信用していたのに真実ではなかった場合に、その意味が分かります。

たとえば、商品を持ってきた人を所有者だと信じていたのに、別に本当の所有者がいた場合のように、所有者だと信じ行った行為で何か損害を被ったとしても護ってあげます、と言う意味になります。

もう少し分かりやすく言うと、

所有者でもなければ、売る権利もない人が、持っている商品を第三者に売ったとしても、その商品を売った人を本当の所有者だと信じて買った人を保護してくれる、と言うことです。

「保護してくれる」とは、

本当の所有者が「私が本当の所有者なので、その商品を返してください」と言って来ても、返さなくてもいい、と言うことになります。

 

しかし、日本の登記制度は、この「公信力」がないのです。

 

不動産の登記には「公信力」がない、とは?

不動産の登記に「公信力」が有ると仮定します。

登記簿の記載されている内容を信用して、その不動産を購入した人は、たとえ登記名義人が本当の所有者でなかったとしても、購入した不動産の所有権を取得することを認めてもらえる、と言うことになります。

しかし、日本の登記には「公信力が認められていない」ので、

登記簿や登記記録などを信用して、登記上の所有者から不動産を購入しても、本当の所有者に対しては所有権などの権利を主張することができないのです。

日本の登記制度では、

真実の権利関係と登記の記載が異なる場合、仮にその登記内容を信じて購入して、不測の損害を被ったとしても、法務局や国は損害賠償に応じてくれません。また、目的どおりの権利を取得することもできないのです。

つまり、登記簿の記載より真実の権利関係を優先させるわけです。

 

ただ、日本の登記制度では、記載された内容は一般的には正しい、と言うことは付け加えておきます。

 

日本の登記に「公信力」がない理由

不動産登記に「公信力」がない理由は、

法務局へ登記の申請をすると、登記官は申請書類を形式的に審査し、不備がなければそのまま登記します。つまり、申請内容が真実かどうかの調査はしないのです。

言い換えると、意図的に虚偽の申請をしたとしても、書類上の不備がないかぎり、その登記は受理され登記されることになるからです。

 

登記に「公信力」はないけど「対抗力」はある!

 

登記には「公信力」はありませんが、「対抗力」はあります!

先ほども説明しましたが「公信力がない」とは、登記を信じて取引をしても、その権利は守られないということですが、「対抗力がある」とは、登記をすることで、その権利は守られるということです。

不動産を購入すると必ずと言っていいほど所有権移転の登記をします。
これは、法務局という公の機関に「この不動産は私の所有物です」と言う登録をすることです。

この登記をしていないと第三者に対して「この不動産の所有者は私です!」と言うように不動産の所有権を主張することができないのです。

 

一般的に動産は、
お金を払って商品を買うと、その商品の引渡しを受けると所有者になります。
例えば、あなたが購入した文房具は、引渡しを受け手に持っているだけで所有権を主張していることになります。

しかし、不動産の場合、
土地を所有している人が、その土地を守るために、常に手に持って移動することはできません。
また、他の人に盗まれないように、いつも見張っているわけにもいきませんし、土地に名前を書くこともできません。

そこで、土地の所有権を第三者に主張できる方法として「登記」があるのです。
これは建物についても同様ですが、登記することによって他の人に所有権を主張できるのです。

これを「登記の対抗力」あるいは「公示の原則」と言います。

 

登記には「公信力がない」ので、所有者として登記しても第三者からは「本当の所有者として認めてもらえないのでは?」と言う疑問が出てくると思います。

もちろん「登記には公信力がない」と言うことを知っている人なら疑ってかかるでしょう。

でも、安心してください。

あなたが真実の所有者であれば、その登記は第三者に対抗できますので、疑いをかけられたとしても、何も気にする必要はないのです。

これが、登記には「対抗力がある」ということなのです。

 

最後に一言!

登記簿や登記記録は不動産の取引では必ず確認するものです。

登記簿や登記記録には、土地や建物の現物を見ても分からない情報が載っており、差押えや抵当権など、取引上で注意しなければならない権利関係やリスクを知ることができるのです。

ただし、登記には「公信力」がないので、国や法務局がその内容を保証してくれるわけではないので、登記内容を100%信じて取引をすることは危険だということは、頭の片隅に留めておいてください。

その危険を回避するために、私たちのような不動産取引の専門家である宅建業者や、登記の専門家である司法書士など、信頼できる専門家がいるのです。

 

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