不動産の取引では、手付金や内入金などの支払金や預り金は、直接、買主が売主に渡すお金ですが、取引内容によっては、宅建業者(仲介業者)が、売主や買主から支払金または預り金を受領し保管することがあります。
その場合、保証または保全の措置を講じるかどうか、および、措置を講じる場合の措置の概要を説明しなければなりません。
それが、重要事項説明書に記載されている「支払金または預り金の保全措置の概要」という項目になります。
そこで今日は、「重要事項説明書で余り説明されない「支払金または預り金の保全措置の概要」」について書いてみたいと思います。
「支払金または預り金」とは?
宅建業者(仲介業者)が売主や買主から受領し保全しなければならない「支払金または預り金」は、手付金・内入金・売買代金などいかなる名義かは問わず、取引の対象となる宅地または建物に関して受領する金銭全般になります。
つまり、宅建業者(仲介業者)が、売主や買主から受領するお金は全て「支払金または預り金」になる、ということです。
ただし、次の金銭は除かれます。
1.受領する額が50万円未満のもの
2.「手付金等の保全の措置」が講じられている手付金等
3.売主または交換の当事者である宅建業者が登記以後に受領するもの
4.報酬(仲介手数料)
保全措置を講じるかどうかは宅建業者の任意
保証または保全の対象となる「支払金または預り金」を、取引完了までの間に受領しようとする場合、保証または保全措置を講じるかどうかは、預かる宅建業者(仲介業者)の任意になります。
したがって「支払金または預り金の保全措置の概要」の項目では、単純に保全措置を講じるのか、講じないのかを説明することになります。
次に、保証または保全措置を講じる場合は、保証または保全措置を行う機関の種類、および、名称または商号を記入して説明します。
保証または保全措置の方法は次の3つです。
1.保証措置/宅地建物取引業協会が一般保証業務として行う
2.保全措置/銀行等が一般保証委託契約にもとづいて行う
3.保全措置/保険事業者が保証契約にもとづいて行う
実務参考例 どのようなときに預かるのでしょう?
では、宅建業者(仲介業者)は、どのようなときに金銭を預かるのでしょう?
ケースとして多いのは「債務超過物件」の場合です。
「債務超過物件」とは、売主の住宅ローンの残債が売買代金を上回っている物件のことで、その場合、手付金を売主に渡してしまい、売主が手付金を使ってしまうと、住宅ローンの全額繰上げ償還や抵当権の抹消ができなくなる、というトラブルを想定しなければなりません。
しかし、保証措置や保全措置を講じる場合、費用と日数がかかってしまうので実務では、
1.手付金は直接、売主に渡し、売主は手付金の領収書を買主に発行します
2.宅建業者(仲介業者)は、同時に売主から手付金と同額の金銭を預かります
3.預り金は、残代金決済(所有権移転)の時に売主に返還し
4.残代金と併せて住宅ローンの全額繰上げ償還と抵当権抹消登記手続きをする
という流れが一般的です。
なんだか、保全措置を逃れようとしているように感じるかもしれませんが、「支払金または預り金の保全措置」を講じるか講じないかは、宅建業者が任意で決められますので、問題はないのです。
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