買付証明書はいつでもキャンセルできるって本当ですか?キャンセルしたらトラブルに!

買付証明書はいつでもキャンセルできるって本当ですか?キャンセルしたらトラブルに! 不動産売買のトラブル

不動産の「買付証明書」を提出し、その後キャンセルしたらトラブルになってしまったお客様からのご相談について書いてみたいと思います。

ご相談内容は、
購入しようかどうしようか、決めかねていた中古の一戸建てがあったのですが不動産業者から
「早く決断しないと、他で売れてしまいますよ」
「いつでもキャンセルできるので、物件を抑えるためにも書いてください」と言われ、
いつでもキャンセルができるなら、と思い「買付証明書」を書いて提出してしまいました。

 

その日の夜、冷静になって考えていたら不安になり早い方がいいと思い翌日、キャンセルしたい旨を不動産業者に連絡したのですが、いろいろと言われ、なかなかキャンセルに応じてもえませんでした。「買付証明書はいつでもキャンセルができる」というのは本当なのですか?

そこで今日は「買付証明書はいつでもキャンセルできるって本当ですか?キャンセルしたらトラブルに!」について書いてみたいと思います。

 

いつでもキャンセルできるって本当ですか?

買付証明書を書いたものの、冷静になって考えてみたら不安になり、キャンセルしたいと考え直す人は少なくないようです。

不動産業者は「いつでもキャンセルできるから」と説明しておきながら、いざ、キャンセルを言われると、

「もう売主様にも伝えてしまっているからキャンセルできませんよ」とか、
「当社の信用問題にもかかわるのでキャンセルされたら困ります」とか、
「売主様は喜んでいるのでキャンセルされたら悲しむと思います」などと

説得に必死になり、なかなかキャンセルに応じてくれず、トラブルになることがあります。

この相談者は、その後、キャンセルできたものの、いつでもキャンセルできると言いながら、買付証明書を書かせておいて、キャンセルを申し出ると、なかなか応じてくれないのは何故ですか?

「いつでもキャンセルできる」というのは本当なのですか?
買付証明書について詳しく教えてください。・・・・というご相談でした。

 

答えを先に行ってしまうと、買付証明書はいつでもキャンセルできます
ただし、キャンセルするタイミングによっては損害賠償責任を負わなければならない場合もあるので注意をしてください。

不動業者が購入を焦らすような常套句を使ってでも買付証明書を書かせようとするのは、一旦書いてしまえば、なんとかなるだろうという考えと、一旦書いてしまえば、申し訳ないと感じ断ってこないだろうという安易な考えを持っているからです。

そして、不動産業者がなかなかキャンセルに応じてくれないのは、お客様目線ではなくて、会社目線、上司目線になっている場合が多いからです。

つまり、契約がキャンセルになれば仲介手数料は入ってこないし、会社や上司から怒られるのが嫌だからです。

 

買付証明書は意思表示の慣習的(かんしゅうてき)な書面

では「買付証明書」という書面がどのような意味を持っているのかについて書いていきます。

不動産の取引では、買付証明書の提出は慣習的に行われています。慣習的というのは、買付証明書を書いて提出していただくことが当り前のようになっているということ、逆の見方をすれば、買付証明書を書いてもらうこともあれば、そうでない場合もあります。

また、買付証明書には決まった書式は無く不動産業者によって記載されている内容が異なります。

 

一般的な内容は、対象不動産を購入したいという意思表示をするにあたって、購入希望価格や支払い方法、融資利用の有無、契約希望日や引渡し希望日、

そして、物件を特定するための不動産の表示などが記載されています。

 

また、売主側からは「売渡承諾書」という書面が提出されることもあります。
これには、買付証明書を基に売主と買主間で打ち合わせをし、整った条件が記載され、あなたに対象不動産を売却します、という意思表示をする書面です。

そこには、売却予定価格や支払い方法、打合せ条件などが記載されることが一般的です。

 

買付証明書や売渡承諾書の法的拘束力

買付証明書や売渡承諾書には法的拘束力はありません

買付証明書や売渡承諾書は、判例上、不動産を買い受ける、または、売り渡す希望があることを表明したものにすぎず、売買の申込み、または承諾の「確定的な意思表示とは認められない」とされています。

また、不動産取引の実務上も、これらの書類は、正式な契約の「前段階」で交わされる書面として扱われています。

前段階と言うのは、買付証明書を提出することで、そこから売主様との売買契約に向けての交渉や商談が始まり、条件が整えば売買契約に進んでいくためのスタートラインの書面ということです。

 

つまり、判例上からも、買付証明書や売渡承諾書には法的な拘束力はなく、キャンセルも可能なものと理解されているのです。

ただし、いつでもキャンセルができるとはいえ、その時期や交渉の進捗状況、相手方が契約締結のための準備を進めている、あるいは準備段階で費用を掛けているなど個々の状況によっては損害賠償の対象になる場合があることを頭の片隅に留めておいてください。

 

民法第555条の原則、売買の成立要件

民法第555条の原則、売買の成立要件

次に「売買の成立要件」について書きます。

民法第555条の原則からいえば、ある物を一定の金額で「売ります」その金額で「買います」という当事者間での意思の合意があれば売買は成立します。

不動産の売買でも「買付証明書」「売渡承諾書」が取り交わされていれば、「売ります」「買います」という意思が表明されているように見えますが、この書類がそろっていても不動産の取引では、法的な拘束力も、契約の成立も認められないのです。

 

何故なら、不動産のような高額な財産に関する売買契約においては、「確定的・最終的な合意がされるまでは、売買契約は成立しない」と考えられているからです。

「確定的・最終的な合意」とは、売買契約書に署名捺印し手付金の授受が行われることを言います。

つまり、買付証明書や売渡承諾書は、「確定的・最終的な合意」 の 前段階 において、条件が整えば、将来、買い受けます、売り渡します、という希望があることを表明する書面にしかならないのです。

 

実際の実務では、買主様から買付証明書をいただき、その内容をもとに売主様と交渉や商談を重ね、売買価格や支払方法、契約希望日や引渡予定日、特約条項など、様々な条件を詰めて双方が合意すれば、売買契約へと進んでいきます。

ですから、買付証明書を提出しても確定的な申込みや承諾の意思表示とは認められず、必ず購入ができる、と言うことにはならないのです。

 

真剣に考え決断し提出しましょう!

とは言え「いつでもキャンセルできるから、取り敢えず・・・・」といった感覚は避けるべきです。

仲介業者や売主によっては、この度のご相談者のように要らぬトラブルに巻き込まれることもあるからです。

また、売主様の気持ちを考えれば 「いつでもキャンセルできるから」とか「取り敢えず」 といった軽い気持ちで、買付証明書を書くべきではないのです。

時間を掛けて真剣に考え、相談すべき人には相談し、報告するべき人にはちゃんと報告しキャンセルする可能性がない状態になってから、購入を決断し、買付証明書を書くようにしてください。

 

もしも、不動産業者から購入を焦らすような常套句が出てきても、あなたにご縁がある物件なら今すぐ決断しなくても購入することができます。

誰か他の人に買われてしまったのであれば、その物件とはご縁がなかった、という気持ちで時間を掛けて真剣に考えるようにしてください。

 

契約をキャンセルされた売主様からの相談

売買契約直前のキャンセルでも、損害賠償を請求されるかもしれません!

ここまでは買主様の立場でのご相談でしたが、ここからは、逆に売主様からのご相談内容です。
売却活動を始めたばかりの空家のご実家に対して購入希望者から買付証明書が届きました。

そこに書かれている購入希望価格や引渡希望日は、売主様が想定していた内容には、ほど遠く、売買契約希望日も1ヵ月も先の日付になっていました。

この段階ですでに売主様は不安を感じていたのですが、これもご縁だと思い、買主様との交渉を開始し、条件内容を整え双方とも合意することができたので、売買契約日を確定させ、その日を待つことになりました。

この段階で契約日は2週間後です。

その間で家の中の動産物の撤去、買主の希望であるクロスの張替えや植栽の剪定、土地の測量を行いました。それが、契約直前になって、買主からキャンセルの申し出があったそうです!

キャンセル理由は「親に反対されたから」????

 

買主は、「買付証明書のキャンセルはいつでもできる」と不動産業者から説明を受けているので悪いことではない、と主張していますが、この場合、買主に損害賠償の請求はできるでしょうか?

という相談です。

 

売買契約直前のキャンセルの場合でも、損害賠償を請求することができるかもしれません!
契約もしていないのに、なぜ損害賠償責任が発生するのでしょう。 

 

契約自由の原則・信義則上の義務 について

契約自由の原則・信義則上の義務 について

契約自由の原則とは、契約を締結するかしないのかは自由という原則のことです。

人が社会生活を営むに際し結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則のことです。

それには4つあって
1.締結自由の原則:契約をするかしないかは当事者の自由、という原則
2.相手方自由の原則:契約の相手を誰にするのかは当事者の自由、という原則
3.内容自由の原則:契約内容をどのような内容にするかは当事者の自由、という原則
4.方法自由の原則:契約の方法は自由である、という原則

 

しかし、交渉が進み契約条件がまとまってくると、売主様にも買主様にも「契約が成立するであろう」という信頼関係が生れます。

その「信頼関係」は保護されるべきもので、誠実に契約成立に努めるべきという「信義則上の義務」が双方に生じます。

つまり、進捗状況によっては「契約前なら交渉を破棄してもいい」言い換えると「いつでもキャンセルできる」ということにはならないのです。

相手方の期待や信頼を裏切り、契約締結をキャンセルした者には、キャンセルによって相手方が損害を被れば、損害賠償の義務が生じるのです

では、どのような段階に達すれば、契約キャンセルによる損害賠償が認められるのでしょうか。

 

この点については、個々の案件ごとに検討は必要ですが、測量や建物の解体、リフォーム工事を行うなど、契約に向けての準備の有無や契約日が決定しているなどが判断基準になります。

 

民法においては、交渉破棄や契約キャンセルに関する規定は無く、当事者は、契約をキャンセルしたということだけでは、責任を問われることはないとしています。

そのため、契約締結前のキャンセルで損害賠償が認められるケースは多くはありませんが、責任を肯定した判例があるのも事実です

 

契約締結上の過失・不法行為責任

例えば、売主様が買主様の要望に応えて対象不動産のリフォームを行ったにもかかわらず、契約直前にキャンセルした場合などがそれに該当します。

買付証明書の提出後に契約締結に向けて準備を開始した段階においては売主様は「この買主様は約束通り買ってくれるだろう」という期待を持つことになるでしょう。

その期待が、社会的に合理的なものである場合には、「契約締結上の過失」により法的な損害賠償責任を負う場合があります。

「契約締結上の過失」とは、契約締結に向けての準備段階で、契約締結を目指す当事者の一方の過失のことで、相手方の合理的な期待や信頼を裏切るような行為をすることで契約が不成立になり不測の損害を被った相手方は救済するべき、という考え方です。

 

では、契約締結前の段階で、相手方が一方的に契約をキャンセルしたことによって損害を受けた当事者は、相手方に対して、どのように責任追及をすることができるでしょう。

契約自由の原則を当てはめれば、
契約するか、しないかは当事者の自由意思に任されているので、
契約日直前でもキャンセルすることは自由にできるように思えますが、

裁判では、契約にむけての交渉過程において、双方が契約できるだろうという密接な関係に至ったと認められる場合には、相手方の財産等に損害を与えないように配慮しなければならない「信義則上の注意義務」を負うことになり、

その義務に違反し、相手方に損害を与えた場合には、「不法行為責任」を負わなければならない場合があります(東京地方裁判所平成5年1月26日判決)。

 

「不法行為責任」とは、故意または過失によって、他人の権利や法律上保護される利益を違法に侵害した場合、その損害を賠償する責任を負うことです。

このように、契約締結の前段階において、相手方が契約に向けての準備を進めていたり、当事者が契約成立への期待や信頼を与える特別な関係性になっている場合には、この期待や信頼を裏切り、相手方に損害を与えた場合は、

その損害を賠償する責任を負うことになるかもしれないのです。

 

ですから、先ほども言いましたが、キャンセルするかもしれない、という不安が無くなってから買付証明書は書いてください。

安易な気持ちで書いてしまうと場合よっては、要らぬトラブルに巻き込まれることがあるからです。

 

最後に一言!

また、売主様の気持ちを考えれば「いつでもキャンセルができるから」あるいは「取り敢えず」 といった軽い気持ちで、買付証明書を書くべきではないのです。

もちろん、急な転勤や勤務先の倒産など「やむを得ない事情」があれば別ですが、契約日が確定すれば、相手方も仲介業者も、契約にむけての準備を始めていることを肝に銘じて欲しいと思います。

その労力と思いを知っていれば、キャンセルなど出来るはずがないのです。

 

ですから、キャンセルするかもしれない原因が残るのであれば買付証明書は書かないでください!

仲介業者からのお願いです。

 

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