不動産契約の「解除」と「解約」の違い!売買契約と賃貸借契約で取扱いが違う!

不動産契約の「解除」と「解約」の違い!売買契約と賃貸借契約で取扱いが違う! 不動産売買のトラブル

一戸建てやマンションなど、不動産の売買契約締結から物件の引渡しまで、早くても1ヵ月程度の期間が必要になります。

その期間中に、売主または買主が何らかの理由で契約を取りやめたいと考えることもあります。

売買契約締結後に契約解除を申し出ることは可能ですが、手付放棄や手付倍返し、違約金の支払いなど、金銭的リスクを負うことになります。

不動産の取引では、契約を途中でやめることを契約の「解除」あるいは「解約」という言葉を使います。

 

そこで今日は、「不動産契約の「解除」と「解約」の違い!売買契約と賃貸借契約で取扱いが違う!」について書いてみたいと思います。

お客様からも、その違いにて質問を受けることがありますので、参考にしてください。

 

不動産の取引では、その契約を取りやめる場合、状況に応じて「解約」と「解除」の2種類の言葉が使われます。

「解除」は、解除権を持った当事者が申し出て、契約締結時に遡って契約関係を解消することを指します。

つまり、契約自体を最初から無かったものにしたいときに使う言葉です。

 

一方の「解約」は、契約締結後に当事者のどちらか一方が申し出て、一定の要件を満たした上で将来的に契約関係を終了させたいときに使う言葉です。

つまり、解約するまでの継続していた契約は有効で、それ以降の契約を取りやめたい場合に用います。

 

本来、解約は賃貸借のような継続性がある契約を前提としているため、不動産売買のシーンで使われるのは「解除」になります。

しかし、現在は不動産売買のシーンでも「解約」と「解除」はほとんど区別せず、同じような意味合いで使われることが多い傾向にあります。

 

「解除」についてもう少し詳しく

契約を「解除」すると、契約そのものが最初から存在しなかったのと同じ状態に戻すこと、つまり、その契約自体、最初から無かったことにすることを意味します。

また、契約解除の場合、契約当事者のどちらか一方の意思表示によって契約を取りやめる場合がほとんどです。

たとえば、契約当事者のどちらか一方に債務不履行(違反)があった場合、その相手方がそのことを理由に契約を取りやめるために「契約の解除」を申し出ることになります。

 

「解除」を辞書で調べると、

1.今まであった制限・禁止、あるいは特別の状態などをなくして、もとの状態に戻すこと。「規制を解除する」

2.法律で、契約当事者の一方の意思表示によって、成立している契約を初めからなかったものとすること。

とあります。

 

すなわち、契約の場面では「契約という特別な状態をなくして、もとの状態に戻すこと」
つまり、契約解除は、初めから契約自体が存在しなかったものとして扱います。

そのため、契約期間中にやり取りされたものに関しては、契約当初の状態に戻し返還する必要があるのです。

 

「解約」についてもう少し詳しく

「解約」とは、将来に向けて契約を終了させることをいいます。

「解除」は「契約した時点に遡って」その契約がなかったことにしますが、「解約」は、継続している契約は有効として「解約した時点で」その契約は終了することを意味します。

 

契約関係が長期に継続する賃貸借契約では、今までの賃料や収益を契約当初に遡って精算することは無意味なので、解除の遡及効(そきゅうこう)は認められておらず、解約の時から将来に向かってのみ契約関係が終了するとされています(民法第620条)。

つまり、「解約」は賃貸借契約のような継続性がある契約で使われていて、不動産売買で使われるのは「解除」になります。

 

しかし、民法や法令でも、「解除」の意味で「解約」を用いるなど、実務においても、売買契約で「解除」と「解約」を同じ意味合いで使われることが多いように感じています。

このように「解除」と「解約」には違いがあるにもかかわらず、法律の条文でさえ混同して使われていて、明確な差はないのではと思うところもあります。

ただ、契約の内容から、どちらの意味で用いられているのかは重要になりますので、明確でないときは、相手方への確認が必要になると思います。

 

先ほどの民法第620条の条文は、

賃貸借の「解除」をした場合には、その「解除」は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

となっていて、「解約」としたいところを「解除」を使っています。

 

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